2024年7月30日~2024年11月4日まで国立科学博物館にて企画展「高山植物〜高嶺の花たちの多様性と生命のつながり〜」が開催されました。
本展覧会では「高嶺の花への登山道」をテーマとしており、表情豊かな高山植物の世界を体験することができます。高山植物への興味関心を引き付け、生態や特徴、動物との関係性、またその環境の現状や保全の取り組みを紹介しました。
私たちは展示企画・設計・施工をお手伝いさせていただきました。
高山植物とは、標高の高い山岳地帯に生育する植物のことを指します。高山は気温が低く風が強い過酷な環境であるため、これらの植物はその環境に適応した独自の特徴を持っています。
「高山植物を”探す楽しみ”と”見つける喜び”を体感する登山道」をコンセプトに、高山植物たちの多様な形態や生態、そのほかの生き物との繋がりなどを、科学的な知見とともに標本資料を用いて紹介しました。
本展覧会のキーワードである「高嶺の花」。主な展示物である植物標本の、過酷な環境によって獲得した美しさや魅力を際立たせながら、来場者にわかりやすい展示表現を目指しました。
エントランスは、メインビジュアルのデザインを活かしながら、夏の山の賑やかさをイメージした表現に。導入部では、ダイナミックな高山の映像を天井から床まで色とりどりの花々で装飾し、臨場感あふれる展示空間で来場者を高山の世界へ引き込む演出としました。
高山植物の代表種を紹介する第一章では、アクリル樹脂包埋の展示物を写真や解説パネルと一体化させ、華やかで洗練された空間でありながら、分かりやすく配置しました。
また、壁面上部には日本の主要な山脈のシルエットに標高の表記を重ねたグラフィックを配置し、「そもそも高山とは何か?」を展示の序盤で視覚的に理解できる構成としました。
展示ケースの外側をランダムにカットした装飾的な壁面の中に展示ケースを収め、来場者が思わず覗き込みたくなるような仕掛けを随所に取り入れています。
さらに山をイメージした順路サインを取り入れることで、まるで実際に山を歩いているような感覚を味わえます。
研究紹介セクションでは、山小屋をイメージした演出を施し、高山の自然環境が研究によって解明されていく様子を表現。また、高山植物を取り巻く環境問題を体感できる展示として、シカの剥製と防鹿柵を設置し、シカによる高山植物の食害とその保護活動を可視化しました。
各章には、植物の拡大写真・環境写真・解説を組み合わせた「発見ポイントパネル」を設置し、実際に山で植物を探してみたい、と思ってもらえるよう工夫しました。
また最終章では、高山を訪れる際の装備やルールに加え、その楽しみ方を紹介。登山時の服装やグッズを、山を彷彿とさせる装飾とともに展示し、貴重な標本展示も交えながら、来場者が実際に高山を訪れるきっかけとなる展示を目指しました。