化石の発掘者、研究者である「化石ハンター」にフォーカスし、恐竜や史上最大の大型哺乳類などの標本を含めた貴重な資料をはじめ、この100年の間に発展してきた研究成果を紹介する特別展示。
国内外の化石ハンターによる最新の研究結果にも迫りつつ、新たな知的冒険の旅に誘(いざな)う科学展覧会です。
私たちはこの特別展の、展示企画・設計・施工に携わらさせていただきました。
アメリカ自然史博物館の館長もつとめた著名な化石ハンター、ロイ・チャップマン・アンドリュースによるゴビ砂漠での探検開始から100周年を記念した本展覧会。
現代の化石ハンターにも受け継がれる化石研究の魅力と研究者たちの情熱を伝えつつ、来場者と共に、100年の研究結果をたどるような展示設計を目指しました。
導入部では、アジアへと向かってこぎ出した伝説のハンター・アンドリュースの冒険の旅を、大海原と砂漠のキャラバンの臨場感で幕開け、その物語へと誘(いざな)います。
研究の舞台は、化石探検の発端となったゴビ砂漠をはじめとする中央アジア地域。そして近年の研究において、哺乳類進化のヒントとして注目されている「アウト・オブ・チベット説」の発生場所であるチベット高原です。
この2つの対照的な地域を、乾いたゴビの砂漠を想起させるオレンジ色と寒冷地であるチベットを想起させるブルーをテーマカラーに設定。各セクションの展示造作にテーマカラーを取り入れながら、二つの環境の演出にこだわりました。
前半のゴビ砂漠でのセクションでは、100年前の発掘の様子を伝えるアンドリュース隊の数々のモノクロ写真を背景バナーとして、当時のキャラバンのラクダや荷物箱の再現からはじまります。
キャンプ地テント風のアーチをくぐると現れるのは、全長約7.5m高さ約5mにもおよぶ史上最大の陸生哺乳類「パラケラテリウム」の全身骨格です。
本展示においては、このような高さのある展示物の全体を一望できるような鑑賞スペースも広めに確保し、リアルな体験を通して大きさや迫力といった気づきを得ていただく設計にも配慮をいたしました。
チベット高原での研究成果を紹介する後半のセクションでは、世界初公開の大型獣「チベットケサイ」の全身骨格復元標本と生体復元モデルを展示。
太古に絶滅してしまったこの「チベットケサイ」は、本展示監修の研究者によって様々な研究結果とそれに紐づく仮説を組み合わせて監修、復元された、今回のメイン展示のひとつです。
会場ではチベット高原の雪山を表現した造作で、そこに生息していたチベットケサイの親子の様子に物語性を持たせて演出。復元作業を振り返る関連CG動画と共に、リアル感と情感を再現した復元標本とモデルの展示によって、最新の研究成果に迫る貴重なセクションとなりました。
入場は感染症対策のため完全予約制であり、会場レイアウトにも配慮が必要でした。
したがって大型化石の立体展示からショーケースに入れた小型の展示品まで、ソーシャルディスタンスを考慮して細かく計算して配置するなど、来場者に安心して鑑賞いただける展示空間を目指しました。