従業員が働きやすい環境を整えることは、経営面で大きなメリットがあります。従業員が効率よく働くことができれば、労働生産性が上がりますし、長時間労働が是正されることでワーク・ライフ・バランスも実現しやすくなります。従業員のエンゲージメント向上や離職率を下げる効果も期待できるでしょう。
しかしながら、このような声も多く聞きます。
充実したIT環境やオフィス環境があれば従業員が働きやすくなるとは思うが、膨大な経費がかかるので一歩を踏み出せない。
経営側としては労働環境を整えたつもりだが、従業員が働き方を変えてくれない。
私たち中央宣伝企画は、弊社は主にイベント・内装工事・展示装飾・テレビ大道具など空間の企画・設計・制作を手がける会社です。2023年に創業75年を迎えましたが、2016年にテレワークを導入するまでは、「非効率」ともいえる働き方を続けていました。染み付いた習慣を、変えようという機運は全くありませんでした。
定刻に一斉出社が基本。決められた自席でデスクトップ型PCに向かう日々でした。たとえ終日外出していたとしても、事務処理の必要があればオフィスへ戻るのが当たり前。寝不足の状態でも無理して出社し、結局能率が上がらずにダラダラと仕事をする姿も見られました。
満員電車はストレスでしたが、困ったときにはお互い助け合う風土があり、行けば仲間に会ってすぐに相談できる安心感がありました。ただし相手が現場や客先訪問などで外出してしまえば打ち合わせは諦める、ということも起きていました。
2016年、IT業界に長く身を置いた現代表が着任したことを機に、労働環境の見直しが始まりました。
まずは基幹システム改修や業務用端末のモバイル化などのIT面から着手し、「企画型業務裁量労働制」「1カ月単位の変形労働時間制」の導入・人事評価の改定など、従業員に裁量を持たせる働き方を下支えする制度面を整えてゆきました。
テレワークの活用は、育児休暇から職場復帰する従業員が活用したことで理解が広がったものの「自分ごと」にはならず、旧来通りオフィスワークを続けていました。
テレワークが浸透しない状況を変えるきっかけとなったのはコロナ禍です。2020年春に、制作現場を除き全社的にテレワークを開始。実際に体験することで、テレワークのメリットに気づくことができました。
体調に合わせて働けています。通勤しなければいけないというストレスから解放されたのは大きいです。
「出社しなければ仕事ができない」というのは思い込みでした。時間と場所に縛られず効率がよいです。
自宅にいると、ついだらけてしまいます。
入社して間もないのですが、先輩社員との関係性を築くことがむずかしく思います。毎日が孤独との戦いです。
電話・メール・チャットなどコミュニケーションの手段が多岐に渡り、直接会って話すより時間や手間がかかるのではないかと感じます。
テレワークが浸透し出社する社員が減ることで、これまでの規模のオフィスは不要となりました。全社的なテレワーク導入と同時に、オフィスの見直しを開始。来るべきハイブリッドワーク時代のオフィスのカタチを模索しました。
成長戦略として本社の縮小移転を決定。2020年12月に開設した新オフィスは、以前と比べ1/3まで大幅に面積を縮小したコンパクトな空間でありながら、コミニュケーション&コラボレーションを促す工夫を盛り込んでいます。
オフィス移転縮小により、新しい事業を始めるための「土台」が作られました。
まず経営面において、毎月の家賃コスト削減効果により、21ヶ月目にオフィス移転にかかった経費を相殺することができました。
22ヶ月目以降は新たな設備投資や新たな人材を迎えるための採用活動も行えるようになりました。
弊社では「オフィス改革」が従業員の働くことへの価値観や働き方を変える起爆剤にもなっています。
オフィス縮小移転後に行った社員アンケートでは、このような声が聞かれました。
綺麗で明るいオフィスなので出社したくなります。カフェのようにリラックスしながら仕事ができる場所があるのがお気に入り!
コンパクトな方が、かえって使いやすいと思います。席を自由に選択できることに開放感を感じます。
業務スタイル、習慣、気持ちを切り替える良い節目となりました。
以前と比べて会話しやすくなりました。旧オフィスでは個人のテリトリーが見えないバリアとなり、話しかけづらかったです。
新オフィスには、労働生産性を上げる工夫として、会議目的に合わせて座席レイアウトを自由に組み換えられる空間デザインと、デジタルホワイトボード「MAXHUB」を導入。以前と比べ「会議を効率的に進めよう」という意識が働くようになりました。ファシリテーションスキルの共有会を開いたりとお互いに研鑽し高め合っています。
従来通りの請負仕事だけでは業績は先細ることが目に見えている中、上向きに転換するための戦略として、提案型ビジネスへの転換を掲げました。
現場へも、新たな仕事を取りに行く動きの優先度を高める方針が示され、実行案件へかける時間を凝縮し、新しい提案に割くことへの意識が高まりました。
そして新しいコアコンピタンスを模索する活動の中から、新たなビジネスが次々と生まれてきています。象徴的な2つのトピックをご紹介します。
私たちは、子どもの豊かな成長をサポートする遊びの環境づくり事業『ASONOBI(あそのび)』を新たにスタートしました。
弊社は子どもたちに人気の恐竜や昆虫など自然科学分野の展示やイベント空間の企画・デザイン・制作・施工をトータルプロデュースしてきましたが、子どもたちが未来を豊かに生きるために必要な力を育むことができるような、もっと楽しく有益なコンテンツ・環境を提供できるようになりたい。子育て中の社員たちからこのような意見が湧き上がったことがきっかけでした。会社としても注目すべき課題と位置づけプロジェクトを始動。次々と新感覚の遊びのイベントパッケージを開発しています。
恐竜展示の舞台裏を支えてきた私たちは、「基礎知識」「舞台裏」を知ることで、もっと展示を楽しめるを知っています。そのことを子どもたちに伝えたい。そのような思いから、恐竜の魅力をお届けするプレ学習サイト『恐竜+(プラス)』の運営を開始しました。
2023年から夏季限定で、ワークショップ型イベント『恐竜教室』を開催しています。⼦どもたちの尽きることない好奇心を目の当たりにすることで、胸が熱くなると同時に、身が引き締まります。子どもたちの想いを叶える空間とは何か、展示の舞台裏を支えてきた私たちはさらなる発展に向け、これからも挑み続けます。
本イベントでは、レイアウト替えが簡単な本社オフィスが会場として大活躍しています。普段は仕事場である場所が親子で楽しめるイベントスペースへと変化。オフィスは社員が使うものから開かれた場所になる可能性を実感しています。
労働生産性を上げるためには、ルーティンワークを省力化し、付加価値を生むための時間を作り出すことが鍵です。私たちは、IT・オフィス環境や管理体制が整うことで、より効率的に働こうという意識に切り替えることができました。
しかしながら全ての社員が心の底から「そうしたい」と思えているかといえば、そうではありません。「やらされている感」のままでは楽しくないばかりか、十分に能力を発揮できません。
会社が目指す方向性と社員自らの想いの歯車が噛み合った状態が理想ですが、どうすれば一段上のステージへと向かうことができるのか、社員自らが議論を進めています。
私たちの場合、「オフィス改革」が労働生産性向上の機動力となりました。戦略的なオフィス縮小移転により、分配投資と従業員のマインドチェンジを両立。新たなビジネスが着実に生まれている状態が成功の証です。
ITやオフィス環境へ最小限の投資が必要となりましたが、現状の働き方・働く環境をトータルに見直すことで原資創出を可能としました。
自社の働き⽅改⾰の経験に基づき、私たちは、企業様のオフィス環境づくりをご支援するサービスCo-working Base(コワーキング・ベース)を提供しております。
コンパクトでありながらチームパフォーマンスを向上するオフィスにご興味を持たれたら、お気軽にご相談ください。