持続可能な社会の実現に向けて企業でも持続可能な経営が求められている昨今では、従業員の健康維持・増進などを推進した健康経営に取り組んでいる企業が多いと思います。
体制を整える、福利厚生を充実させる等、取り組み方は多様ですが、オフィスづくりの視点からアプローチすることも可能です。
組織活性化にもつながる、健康経営オフィスの実現に向けたオフィスづくりのポイントを解説します。
目次
2015年9月に持続可能な開発目標 (SDGs)が採択され、企業ごとに積極的に経営に導入するなど多様に取り組まれています。
こうして企業が取り組むSDGsの中で、健康経営はどのような意義があるのでしょうか。
健康経営は、経済産業省が推進している政策の1つです。
“「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。”引用:経済産業省 健康経営(外部リンク)
健康経営を実践するメリットは主に4つあります。
「健康経営」の名前の通り、従業員の健康維持・増進が主な目的であり、企業が取り組むメリットでもあります。
また従業員の健康が増進されることで心身の不調による医療費の低減が見込めるため、企業が負担する保険料の低減にも繋がります。
離職者が増加傾向の企業は、従業員の心身の健康状態を気に掛ける場面があると思います。
健康経営によって従業員の心身の健康が保たれることで、心身の不調を理由に退職に至るリスクが低減します。したがって従業員の自社に対するエンゲージメント向上や、定着率向上が期待できるでしょう。
従業員の心身の健康増進によって、活力向上や業務に取り組む積極性向上につながります。またいきいき働ける環境は健康増進だけでなく、社内でのコミュニケーション活性化にも効果があるでしょう。
昨今は社内のコミュニケーションに問題を感じる企業が少なくありません。生産性向上のためには組織活性化、チームパフォーマンス向上は働き方改革の重要なポイントです。
従業員のより良い働き方を目指す積極的な取り組みとして、健康経営は企業のイメージアップにつながります。
また経済産業省が認定している「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」に選ばれると、公的な証明を得ることができ、企業の信頼度も上がるでしょう。こうした客観的な指標は優秀な人材の採用に繋がる等、採用活動にも良い効果が期待できます。
上述した健康経営に取り組むにあたり、従業員の活力向上、生産性向上を目指すための「場」、つまりオフィス環境の整備も必要であると言えるでしょう。
健康経営オフィスも、経済産業省が提示している考え方です。
“健康経営オフィスとは、健康を保持・増進する行動を誘発することで、働く人の心身の調和と活力の向上を図り、ひとりひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できる場のことです。 WHO(世界保健機関)によると、「健康とは単に病気でない、虚弱でないというのみならず、身体的、精神的そして社会的に完全に良好な状態」と定義されています。健康経営オフィスも、単に疾病予防に貢献するだけでなく、従業員、そして企業がよりイキイキと活気溢れる状態へ導くことを目指しています。“引用:経済産業省 健康オフィスレポート(外部リンク)
こうした定義があるなか、さらにSDGsの視点を持っていると、自社に合った健康経営オフィスや持続可能な経営を考えていく際に役立ちます。
具体的にどのような点が健康経営オフィスに関連するのか、SDGsの17の目標だけでなく、目標達成の手段や指標を示したターゲットの内容を見ていきましょう。
健康経営は従業員の健康維持・増進が主な目的なので、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」にそのまま合致します。
また、ターゲット3.04「正しい生活習慣を促し、早すぎる死亡を食い止めよう」もオフィスの設計に大きく関わる項目です。1日のうち座っている時間が長い人ほど、生活習慣病になる確率や死亡リスクが高まるといわれています。オフィスはどうしても座ってのデスクワークが主となる空間のため、ターゲット3.04の視点をいかに盛り込むかが重要だといえるでしょう。
健康経営オフィスはジェンダー平等にも寄与します。
SDGsの目標5のターゲットのなかで特にオフィスに関連しているのが、ターゲット5.b「ICTを活用して、女性がもっと活躍できる社会に」です。
ICT(情報通信技術)とは、PCやスマートフォンをはじめとしたコンピュータを使った情報処理や通信技術の総称であり、「IT(情報技術)」にコミュニケーション(Communication)の要素を加えたものです。
PC・タブレットなどの情報端末を支給しテレワークを導入するだけでは、「ICTを活用」というには不十分です。なぜならば、テレワークの人とオフィスにいる人とを交えたウェブ会議では、オンライン参加したテレワークの人が発言しづらいなどのデメリットが発生しがちだからです。デメリットの存在は打合せのオンライン参加という選択肢をとりづらくし、ひいてはテレワークの方針が下火になりかねません。そのためオンライン参加者とリアル参加者とが繋がりやすい設備を備えることが、これからのオフィス空間には重要となります。
テレワークのデメリットがなくなれば、女性も男性も育児や介護の必要にともなう在宅勤務をしやすくなります。在宅勤務がしやすい社風や環境を整えることは、育児や介護を負担しがちな女性をエンパワーメントする一つの方法です。
健康経営の考え方のなかにある「生産性の向上」は、SDGsの目標8のターゲットのなかでも触れられている重要なタームです。
8.02「多様な働き方や技術革新を通じて、経済生産性を向上させよう」、8.03「新たなビジネスや働き方を、支援する政策を推進しよう」、以上2つのターゲットからは、働き方改革による多様な働き方の導入で生産性が向上するとSDGsが奨励していることがうかがえます。
またターゲット8.02に「技術革新を通じて」ともありますが、従来なかった技術の設備をオフィスに積極的に導入していくことで、より快適で便利な空間を作り上げていくことができるでしょう。それによって生産性を向上させていこうという考え方は、健康経営オフィスの理念にそのまま通じるものです。
次に、8.05「すべての人に、働く喜びと正当な対価を」を紹介します。目標8は経済成長だけでなく働きがい、すなわち8.05にある「働く喜び」も重要であると説いています。働きづらく不健康を招く空間では、働く喜びは生まれようもありません。快適に働くことのできる健康経営オフィスの実現は、SDGs達成においても非常に重要なのです。
健康や福祉、多様性、働きがいと経済成長といったSDGsの目標は、一見壮大で難しく感じられるかもしれません。しかしこのように具体的に読みとくと、企業が取り組むべき働き方改革に直結したものあります。
私たちが提案するオフィスづくりのサービス「コワーキング・ベース」では、働き方改革や健康経営に戦略的に取り組むオフィスづくりが、企業の生産性向上や持続可能な経営において重要と考えています。
働き方改革と共にSDGsの考え方を取り入れ、健康経営オフィスづくりに取り組んでいきましょう。
ここまでご紹介してきた健康経営の考え方をもとに、オフィス設計の工夫で健康経営オフィスの構築が可能です。従業員の健康維持・増進をはじめ、組織活性化にもつながる、健康経営オフィスをつくるポイントを、SDGsの視点を取り入れながら解説します。
持続可能な経営のために、勤務中の休憩は必要な時間です。
とくに従来のような固定席がメインのオフィスでは、周りの人の目が気になって休憩しづらい、休憩場所も気にしてしまうといったお悩みが、弊社のクライアント様からも聞こえてきます。そこでいつでも誰でも利用できるリフレッシュスペースや、休憩室を設ける等、従業員がリラックスできる健康経営オフィスづくりが重要になります。
一方で誰かと会話することで気分転換になる場合もあるでしょう。そこで必要になるのは、カフェスペースやマグネットスペースなどのコミュニケーションを促す場所や機能です。
気分転換やふとしたときの雑談は、イノベーション創出のきっかけになることもあるため、オフィスに欠かせないスペースであると考えます。
木目とニュアンスカラーの組み合わせた色彩設計による心理効果が期待できます。リラックスしやすく、コミュニケーションを促す心地よい空間づくりには、内装やオフィス什器の色の組み合わせも考慮してみてください。
また照明は業務内容や目的に合わせて調光できる機能を付加し、生産性と居心地のどちらも考慮した照明設計が可能です。
自社のオフィスの使い方や業務内容に合った心地よいオフィスづくりに、人間工学的な技術をプラスした考え方もぜひご参考ください。
無機質な空間になりやすいオフィスには、植栽や観葉植物等をプラスするのがおすすめです。
一般的に観葉植物はインテリアとして楽しむほか、空気清浄や調湿効果、自然を感じることによるリラックス効果などさまざまなメリットが期待できます。
観葉植物は現在のオフィスにも比較的導入しやすいと思います。上述したリフレッシュスペースやコミュニケーションスペースには、ぜひ植物を置いてみてください。
SDGsの観点でも「誰でも使える」というポイントが重要です。そこで、あらゆる場面で柔軟に使えるオフィス家具は、健康経営オフィスづくりに強くおすすめしたい要素になります。
とくに可動式で高さ調節ができるオフィス什器は、個人の体形や好み、作業姿勢に合わせて誰でも使うことができます。また車いす利用等、障害を持つ従業員がいるオフィスでも便利です。
こうした柔軟なオフィス家具を導入する場合、様々な座席から自由に選べるフリーアドレスや、オフィス空間をフレキシブルに使うフリーレイアウトを取り入れる方法もおすすめです。レイアウト変更や什器の移動によってほどよい小運動が伴います。
限られたオフィススペースを使ったヨガや体を動かすレクリエーションなどの企画を行う場合にも、可動式の家具やパーテーションが便利です。
従業員のストレス軽減や、集中力を高めて生産性を向上させるために、パーソナルスペースの確保は重要です。パーソナルスペースが侵害されてしまわないよう、または適切にソーシャルディスタンスが確保できるよう、隣の人と適切に距離が取れるオフィスレイアウトを考えなければなりません。
他方ではフリーアドレスやオープンレイアウトはコミュニケーション活性化を促しますが、こうしたパーソナルスペースの確保には別途配慮が必要です。この場合、パーテーションやコンパートメント等の仕切りを設けることで、パーソナルスペースを柔軟に作り出すことができます。
昨今では育児や介護など様々な家庭事情を考慮した、多様な働き方が選べるようになりました。また2022年4月からは男性の産休取得が義務化され、出産や育児に伴う休業は、従来のように女性に限られた制度ではなくなりました。
時短勤務やテレワークなどの勤務形態を自由に選択できることは、SDGsの中でもジェンダー平等にも関わる要素だと言えるでしょう。
ハイブリッドワーク中に会議にオンライン参加する場合、しばしば気になるのはオフィスとの空気感の違いや距離感ではないでしょうか。このような会議の問題におすすめしたいのが、オンライン会議ツールやデジタルホワイトボードです。
多様な働き方を支え、誰一人取り残さない状況を目指すために、健康経営オフィスにはハイブリッドワークを効率的に支援するツールの導入が効果的です。
健康経営オフィスをつくるポイントは様々ありますが、自社の場合はどんなことに重点を置くべきか迷っている企業様も多いと思います。
私たちの会社も、ハイブリッドワーク推進を機に本社オフィスを移転し、オフィスの在り方を一から考えました。必要な機能を凝縮したオフィスとは何か、ひとりひとりが働き方改革に取り組む姿勢、生産性向上、コミュニケーションの課題など従業員同士で議論し、私たち自身が働きやすいオフィスを導き出しています。
こうして完成した当社オフィスは、ハイブリッドワークを促進する「あらゆる変化に対応できるオフィス」として、ショールームとして公開しております。また日々のオフィス運やSDGsに取り組むための活動を通し、実際の経験から得た気づきや知見をお客様へのオフィス提案にも活かしています。
ハイブリッドワーク促進、健康経営オフィスを目指している私たちのオフィス兼ショールームに、ぜひ見学にいらしてください。
健康経営を目指した戦略的なオフィスづくりは、従業員の健康維持・増進とともに企業のSDGsの取り組みとしても有効です。従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化において、SDGsと「健康経営オフィス」の視点を取り入れることでより高い効果が得られるでしょう。
働き方改革におけるハイブリッドワークや生産性向上を目指していましたら、SDGsの視点と健康経営を目指したオフィスづくりを考えてみませんか?
私たちがご提案している働き方改革を推進するオフィスづくりのサービス「コワーキング・ベース」では、健康経営を目指したオフィス設計・改装のご相談を承っております。
サービスの概要は以下で公開しておりますのでぜひご参考ください。